ヅカロー千秋楽ライビュ感想 

 宝塚版ハイロー、通称ヅカローのライブビューイングを見に行ってきました。
 ハイローは映画の第一作目から見ておりますが、宝塚は人生で一度も見たことはありません。大阪に生まれた女なのに、この年まで宝塚とは縁なく過ごしてきました。
 生の観劇はハードルが高そうだけど、ライビュならチケットなんとかなりそうだしと言うことで行ってみました。

以下、ヅカローのあらすじです。

ザムよりも前の時系軸、無限解散の数か月後。
ホワイトラスカルズに追われていた女、カナをコブラが助けたところ、彼女はコブラの小学校時代の幼馴染だった。余命半年と宣告され、最後に自分の生まれ育った町に戻ってきたので、エンディングノートに書いたやりたいことリストを実行するのに付き合ってほしいとコブラに頼む。「女がいると喧嘩に弱くなる」という主張のコブラは最初は断ったが、結局、カナを憐れんで付き合ってやることにする。
苦邪組のやつらがSWORD地区を狙っている。
いろいろとコブラを連れまわしてやりたいことリストを実行していたカナだが、急激に様態が悪化して病院に。最後の願いが素敵な場所でウエディングドレスを着ること。ちょうどいいタイミングでコブラにクラブヘブンのオープニングパーティの招待状が届く。カナを連れてクラブヘブンに行くが招待状は苦邪組の罠だった。
なんやかんやあって、苦邪組は倒した。でも、カナは帰らぬ人となってしまった。
傷心のコブラに幽霊のカナが「出ちゃった」とやってくる。
生前のカナの口癖は「形あるものに永遠なんかないよ」だったが、幽霊となったカナは「絆はムゲンだよ」とコブラに語る。そのカナとの出会いが、後々のコブラの生きざまに影響を与えることになる。

とまあ、スピンオフ作品で本編には影も形もないポッと出の女がヒロインになる話はライダーのVシネではファンからの怒られが発生するパターンですが、この作品はすんなりと受け入れられました。私は別にコブラの夢女ではないので、夢女の人とかだと異なる感想があるのかもしれませんが、この過去のエピソード限定で出てくるキャラで、正義ヅラしてコブラやその他のキャラのスタンスを否定することもなく、綺麗な思い出として描かれるヒロイン、カナは決して嫌いなキャラではありませんでした。

で、舞台の感想なんですが、もともとのハイローが音楽をメインに置いた映画として提供されているので、宝塚の歌劇という表現にすんなりと馴染んでいました。自分は、なぜかいきなり歌いだすミュージカルが苦手なタモリ派閥なんですが、ハイローで危機馴染んだ音楽をそのまま宝塚の方々が歌と踊りで表現するのはシームレスに受け入れられました。
あと、とにかく豪華。メインのキャストさんのみならず、モブキャラの方々もきっちりと歌い踊る姿や、舞台の見せ方とか演出とか、そういうものが素晴らしく、宝塚の「格」というものを感じました。
生で見たらもっと圧巻なのかもしれませんが、こういったものになれてないので、ここを見たらいいよと上手にチョイスして画面に映してくれるライブビューイングはわかりやすかったです。
ちなみに、主役のコブラ以外で目立っていたのがロッキーなんですが、確かにロッキーは宝付け向けのキャラだなと思いました。クラブヘブンがうまいこと物語に絡んでいたので出番が多かったです。
原作のハイローとは異なる役者さんが演じているわけですが、違和感なくキャラとハイローの世界観を表現してくださっていました。なんなら濃縮してより濃いハイローを出してきているところもありました。
そんなわけで、とても楽しかったです。

私はヅカローだけで終わりだと思っていたんですが35分休憩の後、まだ続きがあるというのでなんぞと思っていましたら、長蛇の列のトイレで「次はみんなで歌って踊る舞台があるから。短いから。体感5分!!」と熱弁してるファンの方がいらっしゃって、体感5分ならまあ30分ってことかとせっかくだから最後まで見て行くことに。

で、始まったのが、宝塚をよく知らない私がなんとなくイメージしていた「宝塚」って感じのやつでした。イタリアが舞台で華やかなドレス着て、たくさんのキャストさんが歌って踊って豪華絢爛って感じのやつで、最後に階段ステージを羽をつけた人が降りてくるやつで、これだコレ!!って思いました。
実質30分よりもずっと長かったと思いますが、こういうのを一度見たかったので満足でした。

しかしそれでも客電はつかず、そのあと、来年の予定とか、今日の講演で退団する方々のご挨拶とかカーテンコールとかそういうものがかなり長い間続きました。こういうのもきっちりライビュで入れてくるものなのかと驚きながらながめていました。
…まったくもって、体感5分ではなかったです。

とにかく。宝塚というものを全く知らず初めて見たので驚くことばかりでした。
ぶっちゃけ、お金持ちのマダムの趣味だと思っていたので、庶民の私にはとんと縁がない世界だったんですが、なるほどこういうものなのかと見知らぬ文化に触れる機会が出来てよかったです。

じゅじゅステ(8/9 昼の部)感想

じゅじゅステ見てきました。ツイッターで流れてくる評判が芳しくないのでヒヤヒヤしてましたが、私は面白かったです。
自分は若手俳優舞台とか2.5次元舞台はあまりご縁がなく、もののふシリーズとかメサイアをちょろっと見たことがあるぐらい。テニライは一度だけ見たことありますが、テニミュは未履修です。
 界隈の若手役者さんについてもそれほど詳しくないですが、特撮とかハイローに出てる人ならわかります。
 自分は人の顔を覚えるのがリアルでもめちゃくちゃ苦手なんですが、じゅじゅステは割とわかる役者さんが多いし、そもそもキャラクターで把握できてるからそこで認識できるからだれがだれやらでごっちゃになることもなかったです。

 で。
 ミュージカルという作品があまり得意ではなく、なんでいきなり歌いだすのかがわからないというタモリの言うことに全面賛同してしまう人ですが、「あーなんかそういう音楽劇なんだなー」ぐらいの認識で見ていて大丈夫でした。
 確かに歌はうまい人とそうでもない人がいました。あと、楽曲のジャンルというかキャラにあってるあってないとか、演者さんとの向き不向きとか、そういうのがあるんだなあとは思いました。
 あと、歌の部分が原作のセリフになっていてそれが聞き取れないとなかなかしんどいというか、原作知らない演者さんのファンだから見に来たという人だと何が何やらになるのかもしれません。
 歌は「歌」として聞いて、歌詞のストーリー含めた内容を把握しようとすると理解が及ばないかもなあとは思いました。
 全体的に原作の「ダイジェスト」って感じで原作見ていること前提で話が進んでいきます。
 そこで演者さんの原作再現度とか、歌とか踊りとか、アクションとか、何か自分の好きなものを見つけられた人だと決して「虚無」とは思わないと思います。
 自分は伊地知さんが推しキャラなのですが、びっくりするほど原作再現度が高くて、ルックス、声の上ずり方、びくびくした感じ、そう言ったものが解釈一致って感じで、とてもよかったと思いました。しかも、アンコールの時のお辞儀の仕方とかたたずまいまで完璧と言ってよかったです。最後にみんなで帳をおろすところのいじられ方まで伊地知さんでした。できれば歌も聞きたかったのでなかったのは残念でした。
 りょんくんの五条悟はとにかくカッコ良かったです。スタイルとか、醸し出す人外ぽさとか。歌もうまかった。歌聞くのはオーズのデュエット以来かと思うとアレですが(笑)。一番好きだったのは、七海の脳内イメージのキャッキャしてる五条悟を再現してるシーンです。
七海さんは、「♪枕もとの髪の毛が~、総菜パンが~」の「え?そこを歌にするの?」ってところが歌で表現されていました。しかもムード歌謡風。それか一曲だけシングルカットして発売されるとするなら、私はこの歌がいいです。覚えて日常的に口ずさみたいです。
虎杖のナナミン呼ばわりのあとの「ササミン」「たまごのシロミン」呼ばわりされて「誰がタンパク質ですか」がいかにもこの手の舞台でさしはさまれる小ギャグって感じでした。
謎の寸劇は好みがわかれるところだと思います。五条セレクトの映画の擬人化(?)とか。まあでも「ヤクザの恋愛もの」で笑ってしまった自分はとやかくいいません。でも、なんでそんなに吉野順平とその母親にウケてるのかはわからなかったですが。
夏油と真人のブラジル体操は面白かったです。可愛かったし。でも、陀艮のハリボテはそこで予算ケチらないで!と思いました。着ぐるみにしたら可愛かっただろうに…。(ゴン太くんみたいで)
真人は順平君とのからみがいちいちおねショタっぽかったです。原作ではそこまで思わなかったのに。なんていうか、少年を惑わすお姉さんとしての雰囲気がすごかった。真人は性別ないのでおねえさんで間違いないです。
夏油(ていうか偽夏油)は「ドルチェの特撮の悪役キャラ」っぽさに満ち溢れていました。でも、歌は何を表現している歌なのかが文脈ではよくわかりませんでした。
野薔薇ちゃんは原作よりもアグレッシブでした。歌は都会にあこがれる現代の女の子の部分を強調された歌だったのかもしれません。
伏黒は原作よりもツッコミ担当キャラっぽい立ち位置でした。なのにヒートアップするとダンサー引き連れて踊りだす謎(?)。ジャージ姿が可愛かったです。
虎杖は彼の葛藤とかを舞台として表現しようとすると、どうしてもセリフで全部表現するしかないのかなあと思いました。主人公なので一番、内面の物語も語られるパートが多いわけですし。
二年生は、京都交流編は含まれないのなら無理して出さずにその尺をほかに使ってほしいという気はしましたが、パンダと踊る棘ちゃんは可愛かったです。
夜蛾学長はトランポリンの人でした。面談のシーンがひたすらトランポリン。そして歌う。
硝子さんはパンプスの足首がとても綺麗でした。「伊地知をあまりいじめるな」「もっと言って」のシーンがなかったことが残念です。
 全体的に、舞台ゆえのチープな表現が「?」みたいなところはありましたし、「なぜ歌う?」みたいなパートも。戦闘シーンのアクションは見ていて楽しかったです。特に七海と真人の戦闘とか好きでした。
舞台だから許せる表現としては五条と伊地知の電車ごっこみたいな移動シーンです。あれはめちゃくちゃ可愛かったので、チープな車の表現がありがとうって気持ちでした。
伊地知さんはとにかくかわいかったです。モルカーみたいにどきどきびくびくしてる感じがたまりませんでした。それはともかく、ええ大人がスーツ姿で街中で虫取り網振り回してたら、妖蠅がみえなくても周りは逃げるような気がします。

そんなわけで、私はとても楽しめました。不満がないわけではないですが、面白かったです。見に行けてよかったです。

「オメガ・メガエラ」の感想とかレビューとか

 世の中には先のDMMの70%オフセールの恩恵に預かれた心の清らかな人と、そうでない人です。

私は前者でしたので、それまでFANZAでの購入履歴がなかったことをとてもありがたく思いました。

 

今回、最大100冊も70%オフで買えるということで普段読まないような作品にもチャレンジしてみようと思いました。

それでカートに入れたのが丸木戸マキ先生の「オメガ・メガエラ」です。

タイトル通り、オメガバース設定の作品です。

ぶっちゃけ、自分はBLは好きですがオメガバースが好きではありません。

被差別階級のオメガが「運命の番」となるアルファとめぐりあい、結ばれたら幸せになるというご都合主義な設定がどうにも気に食わなくて避けて通ってまいりました。

しかし、この作品の主人公は不妊のオメガです。財閥の後継者という運命の番と巡り会えたのに、アルファの子どころか、オメガの子すら産めなかったので第三夫人にまで落とされて、子供を持つ第一夫人(女のΩ)や第二夫人(男のΩ)に蔑まされて日陰者の生活をしております。

ところでこの作品の舞台は日本なのですが、財閥解体されておらず、普通に重婚が認められているような謎設定です。そして50万円が大金の時代です。

20年前ぐらいの昼ドラによくあったような明治~大正にかけての上流階級モノみたいな世界観です。

そういった、身分制度が当たり前の世界にオメガバースの設定がジャストマッチしております。

 

さて主人公ですが、彼の実家は製薬メーカーで裕福な身の上、オメガでありながら高等教育を受け、医師免許を持ち、薬学の知識も持つとても優秀な青年です。

オメガバース世界につきものの「抑制剤」も彼がプロジェクトの中心として開発しましたが、国の方針で禁止されることとなり、今では密輸等で入手しても厳しい罰をうけます。

権力をアルファに独占されている世界なので、子供を生む道具としてのオメガに自分で発情をコントロールされるようになっては困るということでしょう。

 

それでも家柄が良かったからか財閥の御曹司の嫁として迎えられ、その相手を「運命の番」として溺愛しております。

しかし、その旦那となった御曹司が、アルファであることと顔がいいこと以外取り柄がないような男で、家の実権は彼の父親に握られていて、父親に逆らうことはできません。

ぶっちゃけ、子供ができないと蔑まれるぐらいなら実家に帰ったほうが良さそうなものですが、実家は主人公の妹(アルファ)がついでおり、オメガなのに薬学の才能があった兄と、アルファなのに開発能力のない妹との確執があります。ついでに、兄が開発した薬品を自分の名義で登録して、それがないと実家もたち行かない有様です。

 

 

さて、主人公の旦那の父親が当たり前のように嫁に手を出す悪いジジイなのですが、「旧華族の娘を孕ませてできた子供がいるはずだから、その子を見つけて連れてきたらお前らの養子として家を継がせてやる」と言い出します。ただし、その子がアルファであること前提です。

 

主人公の旦那には第一夫人との間にアルファの女、アルファの男、第二夫人との間に

オメガの女、オメガの男がいるのですが、義理の父は、アルファの女には家を継がせたくないと主張します。アルファでも男と女では格差があります。

そしてアルファの弟の方はグレてしまって素行の悪い奴らと仲が良いという理由で跡目争いから外されてしまっています。

それで、他所で作った自分の息子を孫として継承させたいと言うわけです。

主人公は気が進みませんが、その子に会いに行きます。

しかし、その子はアルファではなくオメガでした。

諦めて帰ろうと思いましたが、その子には首にあるはずのオメガの焼印がありません。不義の子だったがため戸籍に登録されておらず焼印を打たれていないそうです。

ちなみに、他の作品だと第二次性徴までわからないという設定が多いようですが、この世界ではオメガは出生時検診で判明するそうです。

 

それで主人公はその子をアルファと偽って連れて変えることにします。

バレたらどうする?と問われますが、主人公は切り札に自分だけが開発できる「抑制剤」を持っています。

母親と自分を捨てた父親に対する復讐心もあり、利害が一致して、主人公は義理の父の隠し子と共謀することになります。

 

義理の父の若い頃によく似ており、聡明な少年を義理の父はとても気に入り、うまく騙せたように思えますが、まず最初に執事にバレてしまいます。彼も義理の父が使用人に手を出して産ませた子で、同じくこの家に思うところがあります。

それで主人公たちに協力してくれることになります。この男が、いわゆる間男ポジションです。

 

そんな感じで、昼ドラみたいなドロドロの愛憎劇が展開されていきます。そして「あー、はいはい。定番のやつね」とか思ったら、次々と予想の斜め上の衝撃の展開が待ち構えています。

それがとても面白いです。

 

オメガバースの設定を踏まえた上で、お約束を逆手に取った物語になっているので、どちらかというとオメガバース作品が好きな人よりも、そうでない人のほうが面白く感じるかもしれません。

私は後者としてとても楽しみました。

絶対BLチルドレン

ドラマ「絶対にBLになる世界VS絶対にBLになりたくない男」を見た。

漫画の方は、ツイッターで流れてきた宣伝をちょっと見た程度だが、ドラマの方は特撮その他で見知った俳優が多々含まれていたので気になった。

 

見た感想としては「よくできたメタフィクション

漫画の方は、BLあるあるをうまくネタにしておもしろおかしくメタネタとして消化したギャグなのだろうと思われる。

主人公含む登場人物は「BL漫画」の世界のキャラクターとして存在していて、そのことに主人公だけが気づいている、という設定。

そして、「絶対にBLになる世界」のなかで、気づいている主人公だけがそれに抗おうと果敢に戦っている。

 

ドラマでは、その主人公を犬飼貴丈が演じている。

その他、出てくるキャラを演じる役者は、いわゆる「若手俳優」として括られる、特撮俳優及び、2.5次元俳優が大多数を占めている。

おそらく、昨今の若手俳優はBLというものがどういうものであるか、自分たちが「腐っ萌え」という視点で「消費」されていることは自覚していると思われる。

自分たちが好む、好まざるに関わらず、自分たちはいわゆる腐女子たちの妄想の中で、BL世界のキャラとして存在している。

そこで、メタの多重レイヤー化が生じる。

当該漫画のキャラクターが「BL漫画の世界のキャラクター」として設定されている上で、それを演じる役者たちも「BL世界の住人」として存在している。

主人公が望まなくとも世界が彼にBL漫画のキャラであることを望まれる、最後には陥落するように、役者たちも自分たちへに外部の人間に何かを期待される世界の中で生きている。

そこが痛烈な皮肉だと思った。

 

 

掃いて捨てるほどいる「若手俳優」の中で固定ファンをキープして、次の仕事にありつくためにはファンに媚びることも必要で、腐女子のウケを狙って「腐営業」をしないといけないことも多々あるだろう。

それを拒むことも可能だが、彼らを取り巻く環境の中で下手に反発すると、市場からはじき出されてしまう。

自分の我を通せるレベルの役者になるまでは、望まない「役」もやっていかなねばならない。

それを受け入れないといけない若手俳優たちの悲喜こもごもも当然あるのだろうが、「世界」の中で「キャラ」として生きていく覚悟を決めた彼らの今後の活躍を期待したい。